飛鳥寺を中心とした一帯を
真神原(まがみがはら)と呼んでいます。
飛鳥寺の北西から南方一帯に及ぶ平野部で、遠く檜隈方面にまでおよぶとする説もあります。
真神原。
万葉集に真神原のことを詠んだ有名な歌があります。
大口の 真神の原に 降る雪は いたくな降りそ 家もあらなくに
真神は狼を意味しています。
狼のことをマカミと言っていたんですね。
”大口の”は真神にかかる枕詞です。
大口の真神原は見渡す限り何もなく、それこそ雪がしんしんと降り積もれば、前後左右分からなくなるのではないかと思わせるほどです。
文字通りの原っぱです。
手前の五輪塔が入鹿の首塚、向こう側に見えるのが飛鳥寺です。
飛鳥寺の西側~甘樫丘方面から撮影しています。
真神原はこの写真の右側一帯に広がっています。
「大和国風土記」の逸文によれば、
むかし明日香の地に老狼ありて、多く人を食ふ。土民畏れて大口の神といふ。その住めるところを名づけて大口の真神原と云々
・・・とあります。
なるほど、狼を連想させてもおかしくはない雰囲気があります。
しかしながら、これはマガミの地名に付会した説話と考えられています。
飛鳥寺の西から、南の真神原へと通じる道。
真神原のすぐ傍には飛鳥川が流れています。
マガミとは、飛鳥川の曲水(マガミ)の形状を示しているのではないかと思われます。
地形から地名が生まれる例は多く見受けられます。
真神原・・・色々なことをイメージさせてくれる、実に興味深い場所ですね。
飛鳥寺の境内から眺める田園風景は、古代朝鮮半島の風景と酷似していると言われます。
新羅の古都慶州、百済の古都扶余の地に似ているというのです。
真神原には、飛鳥寺創建に関わった朝鮮半島の人々の郷愁が色濃く残されています。